科学者「誰も聞いたことが無い信じられない行動」　ゾウアザラシのオスが溺れかけの仔を助ける　アメリカ

オスのキタゾウアザラシが仔を助ける瞬間

“Altruistic” Bull Elephant Seal Turns Lifeguard To Save Drowning Puphttps://t.co/eyXklvtY1K
— IFLScience (@IFLScience) February 9, 2024

北米大陸の西海岸にはアシカ亜目で北半球最大の『キタゾウアザラシ（Mirounga angustirostris）』が生息している。

これまでこの種のオスは子育てに関心がなく、そもそも子供と全く関りを持たないという説が一般的であった。

しかし、今回この通説を覆す研究論文が発表され研究者界隈に衝撃が走っている。iflscienceなどが報じている。

2022年1月に観測され、先月学術誌Marine Mammal Scienceに掲載されたこの研究論文。研究者らはカリフォルニア州ポイント・レイズ国立海岸沿いで母親から離れ溺れかけていた仔ゾウアザラシを雄のゾウアザラシが救助するという珍しい光景を目撃したという。

これを聞いて「え？親が仔を助ける行動のどこが珍しい？」と思うかもしれない。しかし研究者によるとオスのキタゾウアザラシに限ってこの行動はとても珍しいという。

キタゾウアザラシはオスが重量1～2トンにまで成長する大型の海洋哺乳類。ゾウのような特徴的な鼻を持っており、一夫多妻制で強いオスは約50頭ものメスを従え巨大なハーレムを形成する。

そのためオスは他のオスと戦闘をしたり、生殖活動を行ったりとハーレムを維持するためにほとんどのエネルギーを費やし、子育てなどその他の行動に関してはエネルギーを費やさないことが知られていた。

▽オスのキタゾウアザラシが仔を助ける瞬間の光景

しかし、今回研究者らはオスのキタゾウアザラシが溺れかけの仔を助ける光景を目撃。当時の様子について研究者は「母親は溺れかけている仔に呼び掛けたが、救助しようとはしませんでした。それを見たオスは母親に近づいた後、すぐに海の方へと走り波で流されそうな仔を頭と体で岸に戻したのです。」と説明する。

無事仔を母親の下へと届けた後、オスのキタゾウアザラシは勝ち誇ったように大きな声で鳴き、そのまま砂浜で昼寝を始めたそうだ。

このゾウアザラシのオスの行動について、研究者が同僚らや他の研究者に「このような行動を見たり聞いたことはあるか？」と質問したが、誰一人としてこの行動を見たり聞いたことがある人おらず、論文も存在していなかったとのことだ。

このような利他的行動はこれまでにもオウムやチンパンジー、ザトウクジラなど自然界の多くの生物で記録されているが、キタゾウアザラシのオスに関しては今回が初めてであるようだ。

研究者らによってこのオスの行動はあまりにも意外であったため論文著者の研究者は「もしこの時カメラを持っておらず写真を撮影できていなかったら、論文は学術誌に掲載されなかっただろうね」と語っている。

▼source

https://www.sfgate.com/california-parks/article/point-reyes-
elephant-seal-rescue-18691266.php

▼関連：キタゾウアザラシのハーレムの様子。