カニの生殖能力を奪い、脱皮すら禁止する寄生虫『Sacculina carcini』がヤバすぎる・・・

カニをハックするフジツボ

The Crab Hacker Barnacle Moves Into Crustaceans And Changes Their Sexhttps://t.co/oywolT14PT
— IFLScience (@IFLScience) April 13, 2023

自然界には今にも様々な方法で悠々自適な寄生生活を送っている生物が多く生息している。体表にくっつくものや、内臓に入り込むもの、中には宿主の動きをコントロールしてしまうものまで。

今回、海外メディアのiflscienceでは、カニに寄生するフジツボの仲間『Sacculina carcini』が紹介され話題となっている。

『Sacculina carcini』という学名が付けられているこの生物、英名では　crab hacker barnacle（カニをハックするフジツボ）と呼ばれており、その名の通りカニをハッキングし乗っ取ってしまうという驚きの能力を持っている。

この生物は寄生性のフジツボの仲間で、フジツボと同様に生まれてすぐの幼生ときは海を自由に泳ぎ回っている。幼生時の彼らの目的はたった１つ、一生寄生できる宿主のカニを見つけること。

▼侵入
Sacculina carciniが主に寄生する相手は『ヨーロッパミドリガニ（Carcinus maenas）』という欧州近海などに生息する一般的なカニ。よさげな個体を見つけると、毛の根本にしがみつき、体表を這って傷や関節などの柔らかい部位を見つけるとスタイレットという針を突き刺してそこから体内へと侵入するのだ。カニの体内に侵入する際、これまで持っていた体を覆う硬い殻をすべて捨て去る。

▼成長
ここからはこの寄生虫の独擅場。寄生虫はカニの卵を抱える位置に移動し、根のような部位をカニの体内に張り巡らせ血液から栄養を吸収する。時間が経つとカニの腹部にはゼラチン状でぶにぶにとした寄生体が形成され、カニはこれをまるで我が卵かのように気にかけるのだ。

これは寄生先のカニの性別がオスでもメスでも関係なく。オスの場合はメスに性転換され、メスと同様に腹部で寄生虫をまるで我が卵かのように気にかけるようになる。

▼腹部のぶよぶよはカニの卵ではなく、寄生虫『Sacculina carcini』の本体

A female crab hacker barnacle (Sacculina carcini) settles in the gut of a crab and grows tendrils to draw nutrients from the crab’s tissues. To reproduce, this parasite pushes a “sack” (pictured) outside of its host’s abdomen through which tiny males climb in to fertilize eggs. pic.twitter.com/OfCRrx8fYv
— American Museum of Natural History (@AMNH) April 19, 2018

▼交配
そして、Sacculina carcini がカニの腹部で生育しきり交配の準備が整うと、今度は宿主であるカニの生理機能を根本的に変化させる。

寄生虫はまず、カニのエネルギーを無駄遣いさせないために去勢する。その後、寄生体が傷ついたり取り除かれるのを防ぐため、カニの成長と脱皮を止める。その結果、カニは脱皮できなくなり脚を失った際の再生も不可能となる。

そして、Sacculina carcini はフェロモンを周辺にまき散らすと、周辺を自由に泳いでいるオスがやってきてメスの体内の奥深くに侵入し交配する。

▼産卵
寄生虫の交配後、約6週間のうちに何百もの卵が産まれ卵嚢に貯められていく。その後、卵の放出準備が整うと、カニは岩を登りまるで我が卵であるかのようにばらまき海流にのせる。

この寄生虫のオスは交配後すぐに死んでしまうが、メスは宿主が生き続けるならば1～2年生きることができるという。

寄生虫にハッキングされ、スーパー繁殖用デバイスと化したカニ。自分では気が付かぬうちに自分ではなく別の生物のために自分の体を犠牲にして生きなければならないなんて、想像するだけでも怖ろしいい。

▼source